(概要)
2016年3月に日本図書館協会の「図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン」が正式決定されました。
「戸籍上の性別に違和感を持つ人(性同一性障害を含む)等」についても利用上の障害が生じていることをふまえ、そうしたバリアをなくす方策として、各図書館が
・利用申込書での性別欄の廃止(または性別記入を任意し、このことをに明示)
・図書館カードでの性別欄の廃止
・通名(戸籍名以外の公に用いている氏名)での図書館カード作成を可能とすること
を行うよう明記されました。(日本図書館協会 2016年 外部リンク)
(経緯)
2016年2月、図書館協会がこのガイドラインについて意見募集をしており、チャンスとしてトランスジェンダーについても具体的配慮を盛り込むよう修正案を作って、協力してあちこちに呼びかけ、それを何人もの方が拡散していただきました。それに応じて全国から多くの方がこれらについて改善意見・要望を提出いただいたことで、意見に沿った修正がなされました。
(今後の活用について)
日本図書館協会は、国内のさまざまな種類の図書館(公共図書館、大学図書館、学校図書館、専門図書館、公民館図書室、国立国会図書館、その他の読書施設、情報提供施設)をカバーしている団体であり、このガイドラインはそれらに広く適用されます。
もし、利用する図書館で、これらの点について、まだ改善されていないようなら、このガイドラインの情報を添えて説明し要望すれば、改善していただけるはずです(このガイドラインで、合理的配慮に基づく相談と調整が施設管理者に義務付けられています)。
この成果を大いに活用していきましょう。(もし、今後要望してそれでもなお改善されない図書館等の事例があれば、知恵を出し合って克服していきましょう。)
他の公的施設利用や民間企業についても、これをよい先例として改善が進むことを期待しています。
(差別解消法の意義・効果)
「1-(1)ガイドラインの目的」にもあるように、障害者差別解消法が制定され、「不当な差別的取扱いの禁止」「合理的配慮の提供」「基礎的環境整備」が(公立図書館も含む)公的機関全般に義務(私立には努力義務)付けられたことにより、このガイドラインが策定され、その過程でパブリックコメントが行われ、こうした全国に通用する改善をわたしたちが手にすることができるようになりました。これは現在国会で審議中の、性的指向・性自認に関する差別解消の法制度の必要性・意義と効果を、端的にまた具体的に表しているようにおもいます。
念のため補足すると、この事例については、図書館協会が障害者差別解消法の趣旨と図書館のミッションを生かして、性別違和についてもいわば拡大解釈をしてガイドラインに含めていただきました。しかし本来は、セクシュアル・マイノリティへの差別を解消する法整備があればそれによってカバーされる領域です。
(トランスジェンダーの利用上の障害の解消に関連する事項を抜粋)
「1 基本事項
(5)対象となる障害者
差別解消法で対象となる障害者は、同法第二条第一号では、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁によ
り継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とされている。したがって、差別解消法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限らない。また、著作権法第三十七条第三項に基づく障害者登録(注2)を行っている図書館も多いが、本ガイドラインの対象となる障害者はそれに限定されるものではない。
そして、図書館利用に障害のある人(図書館利用の社会的障壁のある人)は上記心身障害者に限らない。心身障害はなくても図書館利用に障害のある人(注3)は多数存在する。」
「注3 図書館利用に障害のある人:」
として、身体障害者などと並んで、「戸籍上の性別に違和感を持つ人(性同一性障害を含む)等」も位置づけられました。
「3 不当な差別的取扱いの禁止
(4)図書館における社会的障壁の一例(合理的配慮または基礎的環境整備で対応するものの例)」として、
⑧新規登録の申し込み用紙に性別欄があり、その記入が必須になっている(性同一性障害等のトランスジェンダーの人の利用が困難)
⑨図書館カードに性別欄がある(同上)」
が明記されました。
「4 合理的配慮
(3)図書館における合理的配慮の例
⑤ルールの変更」 に、
「戸籍名以外の公に用いている氏名の使用等」が明記されました。
「5 基礎的環境整備
(8)規則・ルールの修正
例 新規利用登録用紙の性別欄→性別欄を削除するか、記入を任意としそのことを明記」と、実例として明記されました。